日銀バズーカ砲で家計はどうなるのか

先週金曜日に、日銀による異次元の金融緩和策第2弾が公表され、
その後急速に円安、株高が進行しました。


巷では、黒田日銀バズーカ砲と呼ばれることもあります。


また、同じ日に、国民の年金積立金を管理運用するGPIFという機関が、
株式の投資比率を引き上げることを正式発表しました。


なぜ同じ日なのか、真相はわかりませんが、
日銀バズーカで、円安、株高の流れを起こす一方、
GPIFが保有する国内外の株式のウェイトを上げて収益機会を増やし、
将来の年金資金の不足分をまかなおうとする狙いもあるのかと思います。


実際、株式投資信託等による資産運用に取り組んでいる方も、
今回の大幅上昇で喜んでいるのではないでしょうか。


しかし、生活面を考えると、喜んでばかりはいられません。


日銀バズーカは、財政ファイナンスの領域に踏み込んでいるのではないか
との指摘もあります。


財政ファイナンスとは、噛み砕いていうと、すでに1千兆円もある
日本政府の借金を少しずつ日本銀行の借金に付け替えてしまうことです。


ところで、私たちの財布の中にある紙幣には、「日本銀行券」と書かれています。


日本銀行券」は、いわば、日本銀行の借用証書です。


紙幣は、使う人が日本銀行を信用しているので成り立つシステムです。


ちなみに、江戸時代は、主に大判・小判が使われていましたので、
明治時代に、紙幣を導入した時は、なかなか信用してもらえなかったようです。


そこで、紙幣を同額の金貨や銀貨と交換できる仕組みにするなどして、
少しずつ紙幣の信用を築いていきました。


そして現在の「日本銀行券」は、金貨や銀貨と交換できる保証がなくても
誰もがその価値に疑いを持たなくなっています。


財政ファイナンスは、ある意味、その「日本銀行券」にまだ信用があるうちに、
どんどんお札を印刷して、そのお金で、日本政府の借金をまかなおうとする作戦です。


しかも、最近は、そのためのお札の印刷も省略されています。


以前は、日銀券ルールという流通している紙幣以上に長期国債(日本政府の借金)を
買い入れない政策目標がありましたが、今は、一時適用停止中です。


このままいくと、通貨(円)の量が増えすぎて、「日本銀行券」の信用は低下し、
円安が止まらなくなる危険性もあります。


円安が行き過ぎると、物価上昇などで、家計には大きな打撃となります。


日常生活で見える光景には、今のところ変化はありませんが、
今回の金融政策は、誰にとっても、決して他人事ではありません。


何が起こっているのか、真剣にその背景を調べたり考えたりした方がよいと思います。

今から投資を始める人向け5つの考え方

株価の上昇、円安が進み、投資に興味を持ち始めている方も
いらっしゃるかと思います。


一方で、今からのスタートでは、
もうすでに株価は高くなり過ぎているのではないか


円安も進み過ぎているのではないか・・


と心配な方もいらっしゃるかもしれません。


今回は、その不安とどう向き合うのか、考え方のヒントをお話しします。



その1
運用可能資金のすべてを一度に投資しない


余裕資金を残しておけば、株価が大きく値下がりしたとしても、
その時に、追加投資を選択することもできます。


また10年以上などの長期保有を前提にするなら、投資理論上は、
今からでも安全かつ効率的にプラスを目指せる方法はあります。


実際、過去に何度も金融危機はありましたが、永遠に下がり続けて
最後にゼロになるということはなく、時間の中で立ち直ってきています。



その2
このまま投資を始めなかった場合を想像する


投資を始めないまま例えば、円安が、110円、120円・・・200円とさらに進んだら
どんな気持ちになるでしょう。


逆についていかないと怖いと感じるかもしれませんね。


今が高いか、安いかは、結局のところ後になってみないとわかりません。


円安に伴う物価上昇に対処する意味でも、今から投資を考えることは大事です。


もちろん、収益の源泉には、値上がり益だけでなく、利息配当収入もあります。



その3
ライフプランにもとづく運用計画をつくる


投資を始めるにあたって、まずやるべきことは、運用計画の立案です。


やみくもに何かを買えば良い、ということではありません。


具体的には、ライフプランを立て、運用可能資金を割り出し、
運用目的、運用期間、目標利回りを決め、ポートフォリオを組みます。


運用スタート後は、ライフプランやマーケット環境の変化をみながら、
定期的に配分の見直しなどを実施します。


特に、運用がいきあたりばったりになった経験のある方は、
一から、しっかりと計画を立て直すことをおすすめします。


計画は、家の建築で例えるなら、設計図です。


設計図がしっかりしていれば、異常気象にも負けにくい家を建てられます。



その4
値下がりしてもプラスに出来る方法を学ぶ


ここからは、応用編です。


万一、株式市場の大暴落があったらどうするのか。


対症療法として、投資対象が値下がりしても、プラスに出来る方法があります。


具体的には、先物、オプション、信用取引などです。


最近は、一般の個人でもネット取引等で、この方法のハードルは下がっています。


難し過ぎる方は、こういった手法を組み入れた投資信託を使う手もあります。



その5
独立系のアドバイザーを味方につける


アドバイザーの役割は、単なる情報提供だけではありません。


ご相談者の不安と向き合うことも大切な役割と感じています。


なお、セールスとアドバイスはまったく異なるものです。


特定の金融機関とは雇用関係のない独立系のアドバイザー(FP)なら
立場上、あなたの側に立ったアドバイスができます。


アドバイザー料も含めて投資と考えられる方には、おすすめです。



いかがでしょうか。


投資の不安を解消したい方は、ぜひ5つの考え方も参考にしてみてください。

天動説か地動説か

天体の話ですが、500年くらい前までは、
地球を中心に、太陽や月や星が回っているとする見方(天動説)
が常識として、支持されていたようです。


ところが、その後、コペルニクスにより、
太陽を中心に、地球やその他の惑星が回っているとする見方(地動説)
が唱えられました。


いわゆる「コペルニクス的転回」です。


そして、17世紀に入り、ガリレオ・ガリレイが、
天動説では説明できない現象を次々と発見していきました。


けれど、地動説は、なかなか信じてもらえなかったようです。


ガリレオは、地動説を唱えた結果、宗教裁判にかけられ有罪となりました。


そのとき「それでも地球は動く」と呟いたといわれています。




これを金融の世界に例えてみようと思います。


まず、私たちの生活があり、その周りを世界経済や株や外貨が動いている
とする見方は、1)天動説です。


世界経済を中心に、株や外貨の動きがあり、そして、私たちの生活がある
とする見方は、2)地動説です。


一般的な感覚では、1)天動説の見方をとりますね。


でも、現実的な見方は、2)地動説です。


世界経済が大きく変化すれば、私たちの生活も必ず大きな影響を受けます。




例えば、今、1ドル=107円台まで急速にドル高が進んでいます。


天動説の見方では、ドル高は、私たちの生活とは無関係です。


一方、地動説では、私たちの一番身近な資産「円」の価値が動いていると考えます。


急速な円安ドル高は、米国の景気動向や金融政策にも要因がありますが、
日銀による異次元の金融緩和策も関係しています。


この金融緩和策を際限なく続けると、理屈の上では、円が安くなり、物価が上昇します。


物価の上昇は、私たちの日々の暮らしに多大な影響を及ぼします。


いったん物価の上昇が始まれば、その上昇を抑えるのは、おそらく困難でしょう。


天動説のままでは、生活が脅かされつつある事実に気付けません。


金融の見方も、天動説から地動説に転換した方がよいと思われます。


NISAよりもお得な制度をご存知ですか?

少額投資非課税制度(NISA)の枠を現行の100万円から
200万円以上に拡大することが、今、政府内で検討されているようです。


この制度を呼び水にして、株価の上昇につなげたいとの思惑もありそうです。


ちなみに、NISAは、基本的に長期投資に適した制度です。


短期的に売買を繰り返す取引では、すぐに枠を消化してしまうため、
十分にメリットを活かせません。


もし長期で寝かせておける資金があれば、
NISA枠での長期投資を検討されてみても良いと思います。


例えば、働いて稼いだ所得には、最高50%位までの課税があります。


証券投資からの所得は、原則として、一律20%の課税です。


NISA枠では、その税率が、0%になる可能性があるので、
運用がプラスになる前提であれば、おおいに利用する価値はあります。


・・・


ところで、長期投資に関して、NISAよりもさらにお得になる可能性のある
制度をご存知でしょうか。


「個人型確定拠出年金」といいます。


ご存知の方でも、自営業者向けの制度と理解されているかもしれません。


しかし、実は、会社員の方でも利用できるケースがあります。


勤務先に企業型年金や厚生年金基金などがないケースです。


この制度を使うと、運用益に対する課税を0%に出来る可能性がある上に、
NISAと異なり、1年以内に確実なメリットが生まれます。


具体的にどういうことかというと、例えば年末調整で還付金がもらえます。


厚生年金のみ加入の会社員であれば、月々2.3万円まで掛けられますが、
この掛け金は、全額が所得控除の対象です。


どのくらい還付金がもらえるかというと、
例えば、年の掛け金が27.6万円、仮に高率負担部分の税率が20%の方であれば、
その年に受けられる税還付金は、ざっくりと5.5万円ほど増えます。


なお、税率の部分は、その年の収入などの条件により変化します。


年収が高く、所得控除が少ない方ほど、毎年の税軽減額は大きくなります。
(住民税の軽減はその翌年に反映)


・・・


但し、もちろん、メリットばかりではありません。


例えば、次のようなデメリットもあります。



・60歳までは、原則として年金資産の引出しができません。


・年金資産の受取り時の一時金、年金の選択よって、課税されるケースもあります。


・特別法人税(現在は凍結中)の復活など、将来の税制改正リスクもあります。


・そもそも払うべき税金がゼロなら、年末調整での還付金は増えません。


・専業主婦、公務員の方などは始めることができません。


・制度内で選択できる投資信託は提示されたラインナップに限られます。


・口座を維持するための管理手数料が毎年掛かります。



制度をよく理解し、デメリットを許容できる方には有利な選択肢のひとつです。


ちなみに、2012年1月からは、法改正により「マッチング拠出」という
企業型確定拠出年金の加入者が個人で上乗せできる仕組みも始まりました。


会社員でも出来る節税対策なので、よく調べてみてはいかがでしょうか。

日本人は貯蓄好きなのか

日本人は、貯蓄好きといわれます。


最近、日本銀行が公表した資金循環統計では、
家計の金融資産は、約1630兆円となっており、


内訳は、
現金・預金、約53%
証券(株式・投信など)、約16%
保険・年金準備金、約27%
その他、約4% です。


約53%という数字を見ると、確かに貯蓄好きのようにみえます。


ちなみに、米国の個人金融資産の構成比は、
現金・預金が約15%、株式・投信は約45%です。


ところで、日本人は、本当に貯蓄好き(投資嫌い?)なのでしょうか。


思えば、 日本もバブル景気の頃は、株式や不動産に投資する人が
多かったわけなので、必ずしもリスク性の投資が嫌いな国民性という
わけではないようです。


貯蓄好きの理由として、私が考えたのは、単純なことです。


日本の株価が上昇していないからです。


例えば、日経平均株価は、最高値を付けた25年前から一度も
その水準を回復していません。


最近でこそ、アベノミクスで上昇しているとはいえ、
それでも、ピーク時の約半値です。


一方、通貨が違うので、単純比較できませんが、
例えば、米国のダウ平均株価は、同じ25年間で、約6倍に上昇しました。


米国では、株式や株式投信に投資している人が、
平均的には、25年前から約6倍に資産を殖やしているということです。


周囲を見渡して、米国では、平均的には、上手く行っている人が
多いわけなので、証券投資をするのが当たり前の風潮があるのも必然的ですね。


米国でFP業界が発展しているのも、うなずけます。


日本の場合は、極端な円高もありましたし、
いまはまだリーマンショックで損をした人たちの印象が強いですが、
上手くいっている人の事例を見聞きする数が増えてくれば、
自然に株式や株式投信を始める人も増えてくるはずです。


周りの人が、平均的には、上手くいっているから、自分もやってみよう
と思うのは、米国人でも、日本人でも、心理は同じです。


この心理をよく理解すると、あなたの家計を助ける方法が
見えてくるかもしれません。


ちなみに、日本人でも、証券会社を通じて、外国株を買うことはできます。

株価と雇用

日経平均株価が、15000円台を回復しました。
(6月6日時点)


米国株が好調なことが、材料としては、大きいですが、
国内の失業率が低下し、有効求人倍率が上昇傾向にあることも
ある程度の下支えになっているのでは、と個人的にはみています。


株価が上がると雇用が増える、雇用が増えると株価が上がる
という好循環に入ってきたのではないでしょうか。


また、新卒者の就職内定率も最近は回復傾向にあるようです。



ちなみに、私が大学を卒業して社会人になったのは、
日本のバブルが崩壊し、「就職氷河期」と呼ばれ始めた頃でした。


その後、新卒採用は、やや持ち直しましたが、
リーマンショック後は、またいっきに冷え込みました。


厳冬期を回避する意味で、この時期、就職浪人をする学生さんも増えたようです。


年越し派遣村」が話題になったのもこの頃です。


こうして見ると、株価と雇用は、密接な関係にあることがわかりますね。



日本では、株というと、賭け事など、よくないイメージがありますが、
株式は、経済活動の中で重要な位置を占めています。


実際に投資するかどうかはともかく、
少なくとも、株式の仕組みや役割は、しっかりと学んでいただくと、
生活をしていく上で、大いに役立つと思います。


例えば、今後、再び株価が大暴落したりすると、ほぼ間違いなく就職難が訪れます。


高校生や大学生のお子さんに、なるべく株価が高いうちに就職しておいた方がよいよ、
とアドバイスしてあげることだって、生活の知恵です。


ちなみに、株価は、先行指数なので、雇用の動きとぴったり一致しないことも
覚えておくと役立ちます。



あと、気になるのは、ここのところ実質賃金が下がり気味なことです。


実質賃金とは、物価上昇率を加味した賃金のことで、
給与総額が増えていても、消費者物価の上昇に勝てていなければ、
実質賃金は、下落となります。


特に今年の4月は消費税率がアップしたことも反映し、
実質賃金は、前年同月比で、3.1%も下落しました。


雇用が増えるのは、良いことですが、働いても働いても
物価上昇で楽にならないのでは困ります。



物価上昇に負けないという意味では、例えば、
2015年1月から、物価連動国債が個人向けとしても売り出されるようです。


上手く使えば、物価上昇対策にもなる金融商品です。


最新のニュースに注目していきましょう。

物価上昇時代が近づいています

先月から消費税率が8%に上がり、
来年10月には、10%まで上がることが予定されています。


最近の報道によれば、今後適切な対策に取り組まないと、
2060年には、国の借金が8000兆円を超えてしまう
との試算を財務相の諮問機関が公表したそうです。


消費税10%に向け、8000兆円という数字を唐突にあげて、
大変だ、大変だ、とネットに書いてもらおうとする意図も
見え隠れしますが、個人の力では、どうにもなりません。


仮に来年、消費税が10%になれば、それも物価上昇に反映されます。


また、消費税だけでなく、最近は、円安や資源価格の高騰などでも、
物価上昇に拍車がかかっています。


私も今年1〜2月の自宅の電気・ガス料金を見て、驚きました。


もっとも、政府・日銀は、金融政策として、物価上昇を推進しています。


具体的な物価目標は、2年以内に2%の上昇と、昨年発表されました。


物価上昇とともに、所得も順調に増えてくれればよいのですが・・


・・・


さて、このような情勢をふまえて、家計防衛をどうするかです。


日常的な電気・ガスの節約努力などは、もちろん大切です。


エコ的な観点からも推奨されます。


ですが、本当に家計が苦しくなってから、対症療法的に節約努力をしても
ひっ迫した状態から抜け出すことは、なかなか難しいです。


一番大事なことは、「事前の計画」です。


例えば、楽観的な見通しを元にローンを組み、背伸びをした住宅を
購入しようとしていないでしょうか。。。


あるいは、働いて稼いだお金を、あればあるだけ使ってしまう、
といった生活をしていないでしょうか。。。


上記は、家計が苦しくなる可能性のある典型的パターンです。


もしも、ハッと気づいた方がいたら、冷静に客観的にご自身を
振り返ってみてください。


人生の中で、年収には、やはり波がありますから、
好調なこそ、気を引き締めて、貯蓄に励むといった対応が重要です。


もちろん、リスク許容度のある方は、資産運用も考えましょう。


物価上昇気味の中で、景気が好転しつつあると言われているのは、
おそらく、アベノミクスの株価上昇で潤った人たちの消費や
円安などで業績が好転した企業の設備投資などがけん引しているからです。


もしも、このまま物価上昇時代に入るとすれば、
物価上昇に強い資産運用を考えることも、ひとつの家計防衛です。